魔法通貨で生きる 〜価値の再考〜

魔法を中心にまわる日常と非日常

【人生】ある女性が亡くなって感じたこと。そしてプロのブッキングの仕事とは

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【人生】
ある女性が亡くなった。
プライベートで親しいわけでもないし、一緒に打ち上げで飲んだこともない。時々メールで依頼をいただき、現場で会うだけの関係。
でも、僕の人生に星の数ほどある分岐点の中で、彼女との出会いはとても重要な分岐点でした。
彼女の仕事はアーティストのブッキングとコーディネート。主に海外のミュージシャンやパフォーマー。ごく稀に日本人。
この仕事をしていると、ぶっちゃけ「マジシャンなら誰でも良い仕事」と「あなたのスタイルが必要だから、ぜひ」という仕事の二つがあり、世の中に溢れる仕事の多くは、前者。
それは残念なことというよりも仕方ないことで、呼ぶ側には呼ぶ側の都合があり、自分たちにとって都合の良いことをやってくれる人を呼びたいし、逆にそれができる人であればだれでも良くて、できる限り安く済ませたい。当たり前のこと。
そんな中、彼女からの仕事は、特別でした。
もちろんクライアントからの依頼は最初は前者。そこにプレゼンとアーティストのマッチングという彼女の魔法がかかると、アーティストはいつも通りの自然体でOK、クライアントもそれで大喜び、という理想のアウトプットが生まれる。
センスもへったくれもない人たちが芸人派遣サイトみたいのを開設して、センスもへったくれもないブッキングをして、「間に彼らがいない方が良いアウトプットが生まれたのに」って思われながらも、なぜか間ですごいお金をもっていくのとは、全然違うんです。これが、プロの仕事です。
彼女は、僕がデビューして2、3年、まだまだ未熟な時期にホームページを見て一通のシンプルなメールをくれました。(今も未熟だけど)
たいした経歴もないので、どんな魔法つかいになりたいのか、それを暑苦しい文章で表現しただけの、イタいページ。
「ホームページを拝見しました。文章が気になったので、一度、仕事をお願いしてみたいです。」
というメール。
当時の僕は、レストランや企業の宴会なんかでやるのが精一杯。
しかし、彼女からの最初の仕事はとある高級ラグジュアリーブランドの上顧客だけが招かれるパーティ。喜びつつも、かなり戸惑いました。
この場にふさわしい演技ができるかどうかわからない、と正直に言うと、
「変に合わせようとしないでください。 K O J I さんのスタイルとコンセプトがこの場にふさわしいと感じたからブッキングしました。クライアントにもそれでOKをもらってます。だから、KOJIさんらしく振舞っていただければ、問題ないです。アーティストですから。」
初めてでした。
2、3年のキャリアの中で初めて「アーティスト」として扱わたと実感した瞬間。
それから10数年。年に何度かご一緒する関係。
ラグジュアリー系の仕事に僕みたいなカジュアルな人間が入り込めたのは、間違いなくあなたのおかげです。
「カチッとするのは誰でもできるんです。カチッとした場に溶け込みながら、カチッとしてない空気を作れるのはKOJIさんの魅力です。」
そんな嬉しい言葉をくれたのも、彼女でした。
時にはクライアントから無茶な依頼も来ます。
そういう時は必ず彼女が
「KOJIさんはアーティストです、KOJIさんのスタイルでやるのが一番その場が輝きます。信じてください。」
と、守ってくれる。
彼女からの仕事に関しては、当日現場に着くまで詳細がわからないことがあっても、まったく不安になりませんでした。
なぜなら、いつも通りの自分を表現すればOKだと決まっているから。
今になって思えば、圧倒的な信頼感を寄せていたんだなぁ。
控え室で時々交わした世間話は全部覚えています。
常に全身ブラックでキメているのに、実は笑い上戸。
本番中も控え室での会話を思い出し、笑いを堪えながらパーティ会場の隅で顔を歪めていましたね。
当たり前に続いてきた関係が唐突に途絶え、彼女の存在が自分の人生に与えた変化の大きさを思い知る。
ホームページに載せたイタい文章。彼女からの一通のメール。
たったそれだけのことが人生を変えました。
僕が彼女に語った未来はまだまだ実現できていないけど、必ず実現できると確信できるのは、彼女のおかげ。
最後にご挨拶ができず、個人的にゆっくり話す機会が一度も持てなかったのは残念だけど、アーティストとしての生き方で会話するのが彼女との一番の対話かもしれない。サボれない理由が増えました。
常にアーティストやパフォーマーのステータスを上げるべく戦い続けていたあなたの魅力を誰かとシェアしたことが一度もなかったし、直接伝える機会もなかったので、こんなところに勝手に書いてしまいました。僕の中で、あなたにもらったパワーを誰かに伝えないとバランスがとれないので、すいません。
あのときのメールがぼくの人生を変えました。嬉しかったです。ありがとうございました。
ゆっくりおやすみください。
 
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